2019/03/19
では引き続きワクチンの接種間隔についてのお話です。
今回は2年目以降の追加接種の指針です。少し長いですがお付き合いください。
最初に結論から挙げていくと基本は「1年に1回の追加接種を元気な間ずっと」です。猫も同じです。
普段ワクチンの説明をしていて飼い主さんから「?」を感じるのはここの部分が一番多いかなと個人的には思っています。たしかに人間なら赤ちゃんの時のワクチンを大人になってからも毎年延々と打つなんてことはないですからね。
初年度のワクチンにより獲得した免疫記憶細胞も時間とともに減少していきます。感染症の種類、動物の種類、ワクチンの種類などによってその持続期間は異なりますが、犬猫は概して人間よりもその期間が短いので追加接種の間隔も短くなるわけです。
ただ、この1年毎の追加接種はもしかしたら今後変わってくるかもしれません。
ワクチン製剤の進歩や免疫持続期間が実際には3年以上あると結論づけた研究報告が出たこと、ワクチンの効果が十分にあるかを確認する検査(抗体検査)キットも利用できるようになったことなどからWSAVA(世界小動物獣医師会)のガイドラインはワクチンの追加接種は3年ごと以上の間隔で(ただし抗体検査を実施して陽性であれば)としています。
抗体検査キットがやや高価であることや先の論文とは逆の結論に至った研究報告もあるので残念ながら当院の基本方針としてそのまま採用するにはまだ早いと判断しています。しかし、ワクチンの副作用が強く出てしまう子や、超高齢犬の子にはこのような抗体検査ができるようになったことや接種間隔を1年以上に設定できる科学的根拠が増えてきたことはとても喜ばしい変化だと思います。
ワクチン接種の方針は「集団としての免疫」をしっかり維持することと「個体に対するワクチン負荷」を軽減することの2つに基づいて決定されます。
つまりは年齢やワクチンの種類、相手によって獣医師が言う内容は変わります。そこにはこんな理由があるのだということを少し知っておいてください。
じんアニマルクリニック
院長 倉?仁之