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犬の乳腺腫瘍

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どのような病気?

・中高齢の雌犬でよくみられる腫瘍のひとつ
・腫瘍の発生に性ホルモンが関わっている
・良性と悪性の割合はおおよそ50:50
・腫瘍のサイズが術後の生存率や生存期間に関係する
・1頭の犬で2つ以上の乳腺腫瘍が発生すること(多発)も珍しくない

治療

基本は外科的切除(手術)です。
ときに術後化学療法(抗がん剤治療)を併用することもあります。

ポイントと解説

<ポイント①> 避妊手術と乳腺腫瘍の発生率

<ポイント①>
避妊手術と乳腺腫瘍の発生率

乳腺腫瘍の発生率は避妊手術をしているかどうか、またいつごろ実施したかに大きく影響されます。

避妊手術を受けていない雌犬は、避妊手術済みの雌犬に比べて乳腺腫瘍の発生率が7倍高いことが知られています。また2度目の発情までに避妊手術を行うと乳腺腫瘍のリスクが減少することも明らかにされています。

<ポイント②> 良性/悪性の比率はだいたい半々

<ポイント②>
良性/悪性の比率はだいたい半々

ですので、乳腺腫瘍がみつかっても悲観しすぎてはいけません。

良性であれば手術で根治が望めますし、悪性であっても腫瘍のサイズが小さければ(+転移する前なら)切除によって長期的な生存が望める場合もあります。

<ポイント③> 悪性であっても小さいうちに切除すれば

例え悪性であっても手術時点での腫瘍直径が3㎝未満の場合は、それ以上の場合に比べて予後(病気の経過や生存期間など)が良い傾向にあります。

また転移(リンパ節や肺など)の有無も予後に関わる重要な因子ですので術前の検査や術後の病理組織学検査でしっかりと評価していきます。

 <ポイント④> 乳腺腫瘍症例の半数は多発性

犬の乳腺組織は首の下から股までの広い範囲に分布しています。その全てが同様に腫瘍化する可能性を秘めていますので、一頭の犬に複数の乳腺腫瘍が発生することも珍しくありません(乳腺腫瘍症例の50%は多発性です)。

困ったことにすべての乳腺腫瘍が同時期に発生するわけではないので、中には乳腺腫瘍の手術を23度受けるようなケースもあります。手術で完全に切除できていれば腫瘍の「再発」ではなく「多発」なわけですが、あらかじめこの知識を持っていないと戸惑うかもしれません。

さいごに

 昔からあるからといって放置していると

例え良性の乳腺腫であっても腫瘍組織は死ぬまで増殖を続けます。大きくなりすぎた腫瘍に血管の成長が追い付かなくなると腫瘍はやがて壊死・自壊(部分的に腐り落ちたような感じ)を起こします。そこからさらに感染が起こると腫瘍から膿が出て、悪臭を放つようになります。

その状態で初めて病院へ来るという場合も割とありますが、一度自壊した組織は薬や消毒をどんなに頑張ってもきれい治ることはありません。

直接命に関わらなくともそのような状態は動物、家族両方のQOL(生活の質)を著しく下げます。ですので乳腺腫瘍はできるだけ小さいうちに手術で切除するのが獣医学的なベストですし、麻酔リスク等で手術をしない選択をされた場合はもしも自壊した時にはちゃんと看護してあげられる覚悟が必要だと思っています。